天気予報では最近しきりに「西高東低、冬型の気圧配置だ」と
言われる日が多くなってきましたね。
今日みたいに風が強くても、まだ暖かい日差しがあれば救われたような気分になります。
こんな季節には、朝ベッドから外へ出るのも辛いのですが・・・
下に紹介する詩では、そんな自分を甘やかそうとする心にぴしゃりと一発食らわせたくなります。
寒冷な季節
枯葉みたいに涸いた日日が
北風の中でくるゝと舞つてゐる
僕は一本のステッキのやうに
それらを叩いて進むのだ
ともすると街の人々は口を尖がらせて
不足不平を社交儀禮に使はうとする
おお おびただしい無駄言の喫煙よ
新らしい衣装を着るためには
思ひ切つて一切を脱ぎ捨てることだ
淸々しい黎明の冷たさの中で
またベッドの暖もりを思ふ愚かさを知れ
僕は見る
春を迎へるために骨のやうになつた
一枚の葉すら付けてはゐない樹木の露はな姿を
さうして
樹木の肋骨のあたりに光る
靑い勳章のやうな満月の美しさを
僕はいま新らしい情熱に點火するのだ
この寒冷な季節のさなかにあつて
作者は岩佐東一郎(1905~1974)。
大正末~昭和初期にかけて堀口大學と日夏耿之介に師事し、大學の影響を受けた洗練された明るいウイットとユーモアを特徴とする「軽妙なモダニズム的スタイルの抒情」を完成させた詩人。代表的詩集に『ぷろむなあど』(大12、近代文明社)、『航空術』(昭6、第一書房)、『神話』(昭8、書物展望社)などがあります。
上に載せた詩は、『春秋』(昭16、文芸汎論社)に収められている詩です。
私は「新しい衣装を着るためには/思い切つて一切を脱ぎ捨てることだ」という部分が好きですね。あったかい、ぬくぬくとした環境から自らを離し、「淸々しい黎明の冷たさ」の中で
冷たい風にあたることも、自分を見つめなおすためには欠かせない作業なのですね。
この寒冷の季節、皆さんはどう過ごしますか?
※参考文献: 日本近代文学館編 『日本近代文学大事典第1巻』講談社、1977年。
三好達治編 『日本現代詩大系第9巻』河出書房新社、1975年。
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